俺はどうしようもなく彼女にひかれていた…繰り返し…思いだす、彼女との思い出。
初めて告白した時のはにかんだ笑顔。
夜景を見に行って指輪を渡した時は、涙を流して喜んでたっけ。
7年間の思い出が頭を駆け巡る。
だけど俺は彼女を裏切ってしまった。
野心に負けて、社長の娘を選んだんだ。
彼女は思い出の場所に俺を呼び出した。
本当は彼女を一番愛してる、と伝えたかったけど、
もはや何も言えなかった。
彼女は、 泣いてるような笑ってるような顔で、
「あなたと幸せになりたかった。でも、もう手遅れだしね!」
そういい残すと車を走らせた。
彼女の去った後は怖いくらいの静寂が訪れた。
俺は結局、どちらとも結婚しなかった。
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「お姉ちゃん、お母さん怖いよ」
「大丈夫、私が守ってあげる」
私はそう言ってアザだらけの妹を抱きしめた。
私たち姉妹は母に虐待を受けていた。
父が死んで以来、母は精神的に病んでしまい、自分が
誰なのかすら理解できていないようだった。
そんなある日、学校から帰ると廊下に何かを引きずったような
赤黒い跡。
と、ほんの一瞬、何かが視界の隅をよぎる。
赤い液体の滴る袋を引きずりながら、廊下の角を曲がっていく女。
あの青い花柄のワンピースは…母だ。間違いない。
袋の中身は…いやそんなはずはない。
赤黒い跡を追い掛けてみるとタンスの前で途切れていた。
母の姿は見えない。
意を決してタンスを開くとそこには袋があった。
…恐るおそる袋を開けて愕然(がくぜん)とした。
袋には夥(おびただ)しい数のぬいぐるみが詰まっているだけだった。
「そうなんです。私には妹なんていなかったんだ。そうなんですね?先生」
「はい、そうです。だが、あなたはまだ気づいていないことがある」
私は混乱し、うつむいて青い花柄のワンピースのすそをぎゅっと握った。
外で散歩をしていたら、「キャー!」という女性の悲鳴が聞こえた。
驚いて行ってみると縦2m・横2m・厚さ50cm程の鉄板らしき物の
前に女性が座りこんでいた。
その女性に話を聞こうとしたが、ビックリしたのか話せない。
すぐに作業服を着た人が来て、経緯(いきさつ)を話してくれた。
どうやらビルの上で工事をしている時に、誤って鉄板を道路に
落としてしまったという。
幸い怪我人はでず、女性は驚いて腰が抜けてしまっただけらしい。
それにしても赤いタイルの上に真っ黒の鉄板とは不気味である。
小一時間続けていた散歩にも飽きて、夕陽が暮れる前にもう一度
その場所に寄ってみた。
その鉄板らしき物はまだ残っていた。
とても重いので処理ができていないのだろう。
危ないからか、近づけけないようにか、警備員のような人がいた。
先ほどの女性もそこに佇んでいた。そこで私は声をかけてみた。
「先ほどは驚かれたことでしょうね」
「驚きました。悲鳴を聞いたときはビックリしました」
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