「おい、まだかよ?」
俺は、女房の背中に向かって言った。
どうして女という奴はこう支度に時間が掛かるのだろう。
「もうすぐ済むわ。そんなに急ぐことないでしょ。
…ほら翔ちゃん、バタバタしないの!」
確かに女房の言うとおりだが、せっかちは俺の性分だから仕方がない。
今年もあとわずか。世間は慌(あわただ)しさに包まれていた。
俺は背広のポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
「いきなりでお義父さんとお義母さんビックリしないかしら?」
「なあに、孫の顔を見た途端ニコニコ顔になるさ」
俺は傍らで静かになった息子を眺めて言った。
「お待たせ。いいわよ。…あら?」
「ん、どうした?」
「あなた、ここ、ここ」
女房が俺のえり元を指差すので、触ってみた。
「あっ、しまった」
「あなたったら、せっかちな上にそそっかしいんだから。こっち向いて」
女房は俺のえり元を整えながら、独り言のように言った。
「あなた…愛してるわ」
「何だよ、いきなり」
「いいじゃない、夫婦なんだから」
女房は下を向いたままだったが、照れているようだ。
「そうか…俺も愛してるよ」
こんなにはっきり言ったのは何年ぶりだろう。
少し気恥ずかしかったが、気分は悪くない。
俺は、女房の手をしっかり握った。
「じゃ、行くか」
「ええ」
俺は、足下の台を蹴った。
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二週間くらい前、合コンにて。
一人の女の子と仲良くなった。
話もむちゃくちゃ盛り上がって、向こうも好感持ってくれてるっぽかった。
帰りは二人で帰って、家まで送った。
別れ際、今度は二人で会おうと、ドキドキしながら彼女の電話番号を聞いた。
「じゃー俺がワン切りするね」
と彼女の番号をコールした瞬間…
俺の携帯の発信画面に現れた文字は
「ス ト ー カ ー ?」
実は二年くらい前、数ヶ月に渡って、
昼夜を問わずにある携帯から無言電話がかかってきていた。
ときには女の泣き声が延々と聞こえることもあった。
俺はその番号を「ストーカー?」という名前で登録し、着信拒否にしていた。
しばらくして掛かってこなくなり、すっかり忘れていたのだが、
目の前の彼女の携帯に かけた番号はその番号だった。
ヴヴヴヴヴv ヴヴヴヴヴv ヴヴヴヴヴv
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