忍者ブログ
過去に作った”意味が分かると怖い話”を 淡々と保存していきます。 解説を読みたい場合は、[more]を クリックしてください。
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

家に帰ったら、親父がテーブルでナイターを見ていた。
「お、お帰り。今日は早かったな」
俺が怪訝(けげん)な顔をしながらネクタイをはずすとカーチャンが
「お帰りなさい。今日の夕飯は酢豚よ」
と言った。俺はああ、とか適当な返事をして上着を脱いだ。
すると弟が「にーちゃん、あのゲームムズ過ぎるよ、どうやってクリアすんの?」
と聞いてきたが、俺は返事をしなかった。
 
「あちゃー、打たれちゃったよ」
テレビでは投手ががっくりと肩を落としている。
親父もなんかブツクサ文句をたれている。
弟は漫画を読み、カーチャンは忙しそうに歩き回っている。
俺はテーブルにつき、買ってきたコンビニ弁当の包みをはがしながら
こう言った。
 
 
 
「つーか、お前ら俺のアパートで何してんの?」
 
 
↓2ちゃんねる投稿時のヘッダー(初出「じわじわ来る怖い話part18」)
20 : 本当にあった怖い名無し : 2008/09/26(金) 01:37:28 ID:5+VN8Xa40

拍手[1回]

PR
『走る男』
そうタイトルだけ記された、何とも斬新?なパッケージのビデオ。
「しょうがない、どうせ百円だし暇つぶしになればそれでいいか」
Aは自宅に帰ると、早速ビデオを再生した。
タイトルも出ずに、いきなりホームレスのようなボロボロの服を着た
痩せ型の男が、ものすごい速さで走っている映像が映し出された。
走り方が左右非対称でぎこちない。
 
「?…
 手に何か持っている…鋸(のこぎり)だ。何で鋸なんか持っているんだ?」
それにしてもこの男、こんな全力疾走しているのにバテるどころか
汗一つかかず、スピードを落とす気配さえ一向に見せない。
「ん…? そう言えばさっきからこの男、見たことあるような道を走ってないか?」
俺は段々と胸騒ぎがし始めた。…嫌な予感がする。
「あれ? この道は…? この角を曲がったら…?」
次のカットで胸騒ぎは確信になった。
ああ、ヤッパリだ。この男は家に向かってきている。
しかし、気付いたときには男は家のすぐ前まで着いていた。
いつの間にか、カメラは男の視点になっていた。
画面はこの古いアパートの俺が住んでいる二階部分を映している。
急いでベランダから外を覗くと…
いる!あの男が!
 
男は迷わずベランダの柱を鋸で切り始めた。訳の分からない俺は、
とりあえず
「おい! なにすんだよ! やめろよ!」
と男に怒鳴った。
すると男は俺を見上げた。
 
俺は思わず息をのんだ。
画面からは確認できなかったが、男は両目がロンパッてカメレオンのようだ。
そしてボロボロの歯をむき出しにしてニヤッと笑い、 走って視界から消えたか
と思うと、階段を駆け上がる音が聞こえる。
「ヤバい! ここに来る!」
鍵を閉めようと玄関に急ぐが、男はもうそこに立っていた。
 
俺は居間まで追いつめられた。
鋸を振りかざす男。
俺はとっさにリモコンで停止ボタンを押した。
その瞬間、男は居なくなっていた。鋸もない。
俺はすぐにビデオからテープを引っ張り出してゴミ箱に捨てた。
 
俺の部屋のベランダの柱には、深々と鋸の痕が残っていた。
 

拍手[1回]

捜査本部にて。
俺は貧乏暮らしから解放されたばかりで有頂天だったというのに、
部下が陰気な事故の話をぶり返してきた。
 
「警部、例の焼死事件ですが、これは不幸な事故ってことでよろしいですか?」
「例の焼死? 何の事件のことだよ。ちょっと説明してみろ」
「ほら、先日の焼死事故ですよ。公園のベンチに座っていた
 金融会社の若社長が焼け死んだって事故」
 
そう、それは余りにも不幸な偶然の重なった事故だった。
犠牲者の男性は、テレクラで知り合った女子大生との
待ち合わせのため、街角の公園前に向かった。
その途中、アイスクリームを持っていた女子高生とぶつかって
服が汚れてしまったので、急いでちょうど目の前にあった洋服店に寄り、
店員がしきりにおすすめした綿のTシャツを買った。
彼は公園前のベンチに座って待っていたのだが、そのとき地面は真っ黒だった。
前日、ベンチの背後にある公園のゴミ捨て場に、書道家が大量の墨汁を
捨てて行った。
今朝公園でキャッチボールをしていた青年二人のうち、一人がボールを
投げる際に手元が狂って墨汁の瓶を倒し、地面に墨汁をぶちまけてしまっていた。
待ち合わせ場所で、彼がなかなか来ない女子大生をイライラしながら待っていると、
ゴミ捨て場に主婦がサラダ油のボトルを捨てにやってきた。
その後、チンピラ風の不良がやってきて、傍(そば)の植込みや
ゴミ箱に当たり散らした。彼はサラダ油のボトルも蹴り倒す。地面に
油が零(こぼ)れた。ベンチにもそれが掛った。
最後に、学生風の男が、水の入ったペットボトルを持ってやってきた。
彼は近所に住む苦学生で、猫の鳴き声がうるさかったから避けようとした、
と後で供述している。
 
その日は晴れていた。太陽の光が燦々(さんさん)と照りつけ、
水の入ったペットボトルにより日光が屈折、墨汁が渇(かわ)いた後の、
燃えやすい真黒な地面に集約した。
そしてサラダ油に引火し、パッと燃え上がった。彼が逃げる間もなく、それはベンチに
引火し、彼が着ていた燃えやすい綿のTシャツにも引火してしまったのである。
 
「本当に、不幸な偶然が重なった哀れな事故だったな。」
「警部、偶然と言えば、その時の待ち合わせの女子大生、洋服店の店員、
 アイスクリームを持っていた女子高生の家族、書道家、キャッチボールの青年達、
 主婦、チンピラ、苦学生の9人ですが、全員被害者の金融会社から借金
 をしていて、過酷な取り立てを受けていたって話ですよ」
「うわあ、それはまた凄い偶然だな。世の中には物凄い確率の一致っていうものが
 存在するんだなあ!ビックリだ。
 それはともかく、この事故には特に不審な点もないし、これ以上調べる必要もない
 だろう」
 

拍手[2回]

HOME  → NEXT
プロフィール
HN:
imikowa88
性別:
男性
ブログ内検索
最新記事
最古記事
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
忍者カウンター
Copyright (C) 2024 作者のための葬送曲 All Rights Reserved.

Photo by (c)Tomo.Yun   TemplateDesign by kaie
忍者ブログ [PR]
FC2 Blog Ranking