私はワクワクしていた。
だって久し振りにみんなに会えるから。
だから朝からずっと笑顔だった。
(あっ、木下君、すごい痩せてる)
(陽子、キレイになったなあ…)
(裕美、学校の先生になりたいって言ってたけど、なれたのかな)
そうして遠くからみんなを観察している私の目に、一人の男性の姿がうつった。
(園田君…)
園田君は当時、私が憧れていた人だった。
この人に会いたくて私は…。
だって彼、仕事が忙しくて、前の同窓会には来てなかったから。
同窓会じゃダメだと思ったから。
園田君が来ている事を知った私は嬉しくて、ついニヤけてしまった。
ふと奥の方を見ると、ユキの顔が見えた。
(フフッ、ユキ、笑ってる。嬉しそうだね。みんな来てくれたんだもんね。
ごめんね。ヒヒヒッ)
私は園田君の事を想いながら、そっと手をあわせた。
いやー今日はマジ焦ったわ。昼過ぎにお袋から電話が来て、
「父さんが倒れたらしい」って。
すぐに搬送された病院にバイクで向かったけど、その間
ずっと親父のこと思い出してた。
今朝もいつものように「いってきます」と笑顔で仕事へ向かった親父。
経理一筋25年の真面目なサラリーマン。風邪で熱を出しても会社を休まない親父。
毎日往復2時間も満員電車に揺られてるのに愚痴一つこぼさない親父。
頼むから無事でいてくれ!俺は祈りながらバイクを飛ばした。
――
病院について拍子抜け。命に別状はなし。意識もある。ただの貧血だったらしい。
心底ほっとした。でも、心配してたって言うのは何か気恥ずかしくて
「マジで勘弁してくれよ~、家のローンだって10年以上残ってるんだからさ~」
なんて冗談交じりで悪態ついちまった。ったく素直じゃねえなあ、俺。
親父はバツが悪いのか「すまん…」とだけいって後はずっとうつむいてたよ。
なんにせよ良かった。救急車呼んでくれたウチの近所の公園の管理人さんには
マジ感謝してる。
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imikowa88
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