「お姉ちゃん、お母さん怖いよ」
「大丈夫、私が守ってあげる」
私はそう言ってアザだらけの妹を抱きしめた。
私たち姉妹は母に虐待を受けていた。
父が死んで以来、母は精神的に病んでしまい、自分が
誰なのかすら理解できていないようだった。
そんなある日、学校から帰ると廊下に何かを引きずったような
赤黒い跡。
と、ほんの一瞬、何かが視界の隅をよぎる。
赤い液体の滴る袋を引きずりながら、廊下の角を曲がっていく女。
あの青い花柄のワンピースは…母だ。間違いない。
袋の中身は…いやそんなはずはない。
赤黒い跡を追い掛けてみるとタンスの前で途切れていた。
母の姿は見えない。
意を決してタンスを開くとそこには袋があった。
…恐るおそる袋を開けて愕然(がくぜん)とした。
袋には夥(おびただ)しい数のぬいぐるみが詰まっているだけだった。
「そうなんです。私には妹なんていなかったんだ。そうなんですね?先生」
「はい、そうです。だが、あなたはまだ気づいていないことがある」
私は混乱し、うつむいて青い花柄のワンピースのすそをぎゅっと握った。
(解説)
「青い花柄のワンピース」というところから、私と母が同一人物ということはわかる
だろう。妹がいないことは医者によってわかり、自分≒母ということもわかった。
実際に虐待を受けたことで記憶や精神の退行が起こり、実は成人しているにも
かかわらず、まだ子供のころの記憶と成人の記憶と混同している。
自分の子供にも同様の虐待をしていると考えられる。
これは虐待を受けた子供は虐待をするという無限ループを表現したもので、
私が書いたものの中でも最も恐ろしい類の話だ。
↓2ちゃんねる投稿時のヘッダー(初出「じわじわ来る怖い話part32」)
226 :自治スレでローカルルール他を議論中:2010/10/07(木) 23:28:57 ID:jCXA50FNO(携帯)
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