その夜、私は生まれて初めて幽体離脱というものを体験した。
天井付近から自分の部屋を見下ろしている。
寝ている私自身の顔は暗くて見えない。
しかしこの状況はまずくはないだろうか。
体に戻れないと死んでしまうこともあるというし…。
私は寝ている自分の肉体に戻ろうとした。
が、なぜだろう、体が全く動かない。
ギシギシという音が聞こえる。
まずい、このままじゃ本当に戻れない!
気ばかりが焦り、時間だけが流れていく。
気がつくと、私は寝床の中で朝を迎えていた。
あれは夢だったのだろうか?
あの体験から、3年の月日が流れた。
私は全てを失っていた
友人も恋人も財産も社会的地位も…。
思えば3年前のあの時期が、人生の中で最も充実していた気がする。
だから、終わりもここなのだ
ポケットから鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。
よかった、どうやら鍵は変えられていないらしい。
足音を殺し、寝室に忍び込む。
天井を見上げると丁度よい感じの梁がある。
踏み台を持ってくると、そこに上り、梁に縄をかける。
あくまで今の住人を目覚めさせないように静かにだ
…私は思い出していた。
3年前のあれは、幽体離脱でもただの夢でもなかった。
あれは、予 ガタン
ギシギシ
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