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過去に作った”意味が分かると怖い話”を 淡々と保存していきます。 解説を読みたい場合は、[more]を クリックしてください。
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「神様がいるなんて、あなたも信じていないわよね?」

 


彼女の問いかけに、僕は肯(うなず)いた。

世の中に宗教はたくさんあって、その数だけ神様がいることになっている。

けれど、神様や天国または地獄なんて概念は、生きている人間を慰(なぐさ)めたり

戒(いまし)めたりするために誰かが作ったものに過ぎない。

 


「だったらお坊さんが唱えるお経だって、意味なんか無いわよね?」


 

僕は再び肯(うなず)いた。

神様がいないなら、人間の創作物である経文に超神秘的な力が宿るはずも無い。

あれは故人の霊をあの世へと送り届けるためではなく、あくまで遺族の悲しみを

鎮(しず)めるために読まれる物だ。

 


「じゃあ、この世を彷徨(さまよ)う魂は、どうしたら成仏できるのかしら?」

 


なるほど、宗教家が行う浄霊(じょうれい)儀式なんかに意味が無いとすれば、

現世に留まる霊はどうしたら成仏させられるのだろう。

僕は彼女に言った。

 


「生前に熱心な信仰があれば、経文を読んでもらうことで、

 或(ある)いは成仏できるのかもしれないね」

信心深かった故人なら、お坊さんの読むお経にありがたみを感じて、

安らかに眠る事が出来るのかもしれない、と僕は思った。

 


「そう……そうかもね……」

 


それきり彼女は俯(うつむ)いて、黙り込んでしまった。

僕はひしゃげたままのガードレールに花束を手向(たむ)けて、その場をあとにした。

 


拍手[6回]


 

 

 

(解説)

私が2ちゃんねるに書いたものの中でも最も美しい文章である。

言うまでもなく、彼女は死んでいて、僕は彼女に花を手向けるために事故現場に

やってきた。彼女は成仏せず、彼女の幽霊との会話を「僕」は淡々と

していく。彼女はいつになったら成仏して、現世を離れられるのだろう。

そう考えるとじわじわ怖い話になるのではないか。

2ちゃんねるに投稿するには、少し文学的にしすぎたきらいがある。

↓2ちゃんねる投稿時のヘッダー(初出「じわじわ来る怖い話part25」)

836 :sage:2009/08/03(月) 12:18:26 ID:wenda2Wp0(pc) 

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