「し…しようか?」
僕がボソッと呟くと、彼女はすかさずこちらを振り返った。
「な、何いってんのよ…馬鹿じゃないの!?」
彼女の目には明らかに軽蔑の色があった。
「え、いや、その…」
ショッピングセンターの中の小さな花屋は外の蒸し暑さが
嘘のように涼しかったが、僕は背中に冷たい汗を感じた。
せっかくの彼女との初デートなのにまずいこと言ったかな…。
少し離れたところで薔薇(ばら)を見ていた僕の母親くらいの
おばさんも、僕らの会話が聞こえてたらしく、チラリ横目で見ている。
「もう、恥ずかしい。わたしたち中学生よ」
彼女は足早に店から出て行った。
僕も慌てて後を追った。
[1回]
(解説)
紫陽花(あじさい)を、しようかと読んでしまい、彼女にあきれられるという話。
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