街の占い師として細々と暮らしていた頃の私は、非常に貧しかった。
占い師としての私の才能を認めてくれた人や、ファンも何人かいたけれど、それでも
貧乏暮らしだった。
食べていくことにも困り、○×金融から金を借りた。その借金は見る見るうちに膨れ
上がり、私は○×金融の社員達から、ヤクザまがいの取り立てを受けるようになった。
彼らは「○×の社員は占いみたいなくだらない物は信じない主義なんだ」と言って
私を鼻で笑い、ことあるごとに「そんなもの辞めちまえよ。カラダで稼げるオシゴト
でも紹介してやろうか」と言った。
いつ風俗店に身売りされるかもわからない、地獄の日々を送っていた。
そんな時だった。私の占い師としての才能が発揮されたのは。
ある日この街の未来を占っていたら、翌週に連続通り魔殺人事件が起こる、という
結果が出た。急いでTV局や新聞社に電話を掛け、連続通り魔殺人を防いでくれる
よう懇願した。
結果が出た。急いでTV局や新聞社に電話を掛け、連続通り魔殺人を防いでくれる
よう懇願した。
しかし、マスコミはみな、私の言葉を鼻で笑った。
占いの結果など、一々相手にしてはいられないのだろう。
私は非常に焦り、やきもきしていた。
しかし、予言されたときになって何となくテレビを見ていたら、本当に連続通り魔
殺人事件が起こっていた。新聞やテレビでは大ニュースになっていた。
そして、私を嘲笑っていたマスコミは一斉に私の元へ押し掛け、まるで掌を返した
ように「奇跡の占い師」として、私を持ち上げた。
それ以来、少しだけ生活は楽になった。まだまだ○×金融からの厳しい取り立ては
続くけれど、少なくとも食べていく分には困らなくなった。
私はその後、次々に占いを当てた。
東京タワーの爆破を予知したところ、後日本当に東京タワーに爆弾が仕掛けられて
いたことがわかった。爆破が未遂に終わったことで、私は感謝された。
大型客船の沈没を予言したら、本当に船が沈んでしまった。私の占いを気にした
船長が救命ボートを余分に積んでいたので死者は出なかったが、そうでなければ大
惨事になっていただろう。
船長が救命ボートを余分に積んでいたので死者は出なかったが、そうでなければ大
惨事になっていただろう。
私は有頂天になっていた。そんな時、私立探偵をしている友人から電話が入った。
「なあ、これは言い辛いことなんだが……実はお前には予知能力なんて無いんだよ。
ちょっと出来すぎていると思って個人的に調べてみたんだが、酷いことがわかった」
私は慌てた。
「何を言ってるの。通り魔から船の沈没まで、全部当ててきたじゃない」
友人は電話口でしばらく躊躇(ためら)うように黙っていたが、やがてこう切り出した。
「実は、昔からのお前のファンだった女がいただろ? そいつが全部仕組んでた
らしいっていう情報をつかんだんだよ。これは確かな筋から聞いた情報だ。
らしいっていう情報をつかんだんだよ。これは確かな筋から聞いた情報だ。
東京タワーに爆弾を仕掛けたり、船に細工したり。今のところ、警察は勘づいて
いないらしいがな」
いないらしいがな」
私は茫然として、言葉も出なかった。そのまま電話を切った。
翌日。
私は報道記者を呼び、こう告げた。
「新たな占いの結果が出ました。○×金融が放火され、社長や社員は全員焼死するで
しょう」
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